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夏のおわり [日々鉄道小景~ショートストーリー]

昼間の喧騒がうそのように、夕暮れの海辺は静かだった。
遥か彼方まで続く水平線、その先に今まさに沈まんとする夕日が、最後の光を名残惜しそうに僕に投げかけてくる。
波打ち際に佇む僕の耳に届いてくるのは、繰り返し打ち寄せる波の音だけ。

幾万遍も繰り返されるこの波の往来のように、僕がこの場所に立った数も数えきれない。
幾度待っても君が来ないことを知りながら。
それでも、今日もまた僕はこの場所に立っている。

「ずっと待ってるから」
寂しそうに笑う君にそんな最後の言葉を投げかけてから、もうどれくらいの年月が経っただろう。

胸をかきむしられるような後悔と、自分の至らなさを責め続けた日々。
そんな過去も潮風に吹かれていると、今はなぜか懐かしい。

僕はこの場所が好きだ。
「いつかまた一緒に来ようね」と交わした約束は果たせなかったけど。
それでも、君が好きだと言っていた海の香り、音、ここにあるすべての景色が、僕をまた幸福にしてくれる。

人づてに、君が結婚したと聞いた。

寂しさがないかと言われれば、それは嘘になるけれど。
それでも、もし君に再び会えるのなら。
おめでとう。
その言葉だけを伝えたい。

空を見上げると、星々が輝きだしている。
茜色に染まった空は、次第にその色を深い海の青へと変えていく。

秋がすぐそこまで近づいていた――

20110717_177-2.jpg
[信越本線 青海川-鯨波 この物語はフィクションです]
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