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日々鉄道小景~ショートストーリー ブログトップ
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運命 [日々鉄道小景~ショートストーリー]

20101127_007.jpg
「わたしね、人の運命がわかっちゃうんだ・・・」
はるか彼方まで続く鉄路が、赤い夕焼けに染まる風景を見ながら、
彼女はぽつりとそうつぶやいた。
「えっ?」
驚いて振り向いた僕をじっと見つめながら、
「会う人がね、いつどこでどんな人と知り合って、どんな仕事に就いて、誰と結婚して、
そして……いつ死ぬのかも」
寂しそうに笑う彼女の大きな瞳には、天空に広がる茜色の空が映し出されていた。
もしかしたらその瞳の色は、空の色だけではなかったのではないかと思わせるほどに。

秋の終わりの田舎の空は限りなく澄んでいて、ひとすじのうろこ雲がまるで
終わりゆく季節を惜しむかのように地平線の彼方に伸びていた。
遠くの山の端に、今まさに消えんとする夕陽の最後の一しずくを受けながら、
その山に向かって一直線に伸びる眼前の鉄路もまた、赤く輝いていた。

もし、運命というものが存在するのなら。
人はそれに抗うことなど出来ないのかも知れない。
それは、やはりとても悲しいことなのだろう。

そして、
それを否応なく知ることになる彼女の悲しみもまた、
計り知れないものがある、と僕は思う。

普段は子供のように無邪気に振る舞っている彼女の、
それは初めて見せる一面だった。

もし、運命というものが存在するのなら。
それは眼前に広がる鉄路のようなものなのかも知れない。
僕たちが、そこにレールがあることに気づかないだけで、
もうずっと前から、そこにはレールが敷かれているのかも知れない。
列車は深い谷を渡り、高い山を登り、
春の桜、夏の海、秋の紅葉、冬の雪
めぐり行く季節の移ろいの中を駆け抜けながら、
一路、終着駅という名のゴールを目指しているのだから。

それでもなお。
僕は信じたい。
運命を作って行けるのは、他の誰でもない、自分自身だということを。

「僕の運命も分かるの・・・?」
そう問いかける代わりに、僕は彼女の右手を強く握った。
彼女は戸惑いながらも、少し遠慮がちに、それでも力強く、その手を握り返してきた。

僕たちの運命は、この線路のように平坦でまっすぐなものではないかも知れない。
そして、彼女もまたそれを分かっているのだろう。

それでも、僕たちは歩き続ける。
そこにレールがある限り。

・・・・・・終着駅という名のゴールに向かって。

僕たちは、日がすっかり暮れた群青色の空の下、
線路に沿った田舎道を、手を取りあって歩き始めた。

遠くの草陰から、虫たちの鳴き声が聞こえてくる。
空では大きな月が、そしてその隣では宵の明星が、小さく輝いていた・・・・・・


[カバー写真 2010/11/27 久留里線 小櫃-下郡 この物語はフィクションです]

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ふるさと [日々鉄道小景~ショートストーリー]

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「あっ、この人知ってる!わたしのふるさとの偉い人だもん。たしか『銀河鉄道の何とか』とか書いた人だよね!苗字は・・・石沢だっけ?」
・・・上野駅地平ホームに立つ石碑を見ながら、彼女は笑って得意げにそう言った。
「違うよ。『銀河鉄道の夜』を書いたのは宮沢賢治。この人は短歌とか詩とかを作った人だよ。それと苗字はイシカワ。」
偉人の名前もその作品名も、あきれるほど違っていたけれど、なぜか二人とも彼女の故郷の出身であることだけは正しかった。
「え~、そーなの?なぁんが、またおべたふり(知ったかぶり)したみてぇだねぇ」
僕としゃべるときは、いつもつい出てしまうのだという方言を今日もまたうっかり出しながら、彼女はまだ幼さの残る横顔を赤らめた。

僕の故郷は、ここから電車で30分の所にある都心のベッドタウン。
彼女のふるさとは、ここから新幹線で2時間半、そこからローカル線に乗り換えて更に1時間はかかる田んぼと山以外何もないような、山奥の村。
二人とも故郷を出て、もう数年が経とうとしていた。

「・・・なあ。近くて帰れない故郷と、遠くて帰れないふるさと。不幸なのはどっちかなあ」
彼女の右手を少し強く握りながら、こう聞いてみた。いつも通り、少し考えてからニコっと笑い「う~ん、よく分かんない。でも近くにいる人と、こうやっていつまでも一緒にいられることが一番の幸せかなぁ」とあどけない笑顔で答えてくれることを想像していたが、

彼女はなぜか何も答えずに、すっと僕の手を離し、ホームの向こう側へ小走りにかけて行った。

「おい、待てよ~」追いかけようとした僕の耳に、ふと懐かしいアナウンスが聞こえてきた。

「業務連絡~トオサンバン 折り返しのイチマルサン列車接近!
お待たせいたしました~十三番線には~二十時五十七分発、東北線経由の青森行き~急行八甲田が到着いたします~白線の内側に下がってお待ち下さい~」

アナウンスを聞いた彼女は、クルっと振り向いて
「なつかしい~この電車、子供の頃よくこれでお母さんと東京さ来たよ~」と笑った。

「へえ、そうか…」
何で、新青森まで新幹線が伸びる年に、廃止されたはずの夜行列車が走ってるんだろう、と少し疑問に思いながらも、僕はやっと彼女に追いついて、手を伸ばして握ろうとした。



・・・・・・そこには何もなかった。
薄暗く白い天井で揺れている消えた電灯に向かって、僕は手を伸ばしていた。
部屋の中はほの白く、外では早起きのスズメの鳴き声が聞こえる。
昨日飲み過ぎたビールの空き缶がベッドの下に3、4個転がっているのを、ぼんやりと見つめながら、僕はのそのそと起き上がった。
時計を見ると針は4時半を指している。外からは朝刊配達をしているバイクの音が聞こえてきた。

ちょっと前までは、こんな夢を見た後は、必ず涙の跡が頬に残っていたものだけれど、最近はもう泣くこともなくなった。
「僕も少しは成長したのかな」
ぼぅっとする頭で、それでも心の芯には何か熱いものがあるのを強く感じながら、僕はそうひとりごちて、目覚まし時計の鳴る7時まで、もう少し横になることにした。

遠くの高架線を、始発の新宿行各駅停車が、静かに走り去って行く音が聞こえた。
「あの始発電車が、もしかしたら銀河鉄道の折り返し回送列車なのかも知れない・・・」
そんな馬鹿げた空想を思いながら、


僕はもう少しだけ、


まどろみに身を任せることにした。




カバー写真:2010/11/06 上野駅 Canon EOS50D この物語はフィクションです。

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ハレオトコ [日々鉄道小景~ショートストーリー]

昔、「はれおとこ」と呼ばれていた時期があった。

家族の大切な記念日、学校の入学式、友達と出かけたバーベキュー、そして・・・
大切な人と出かけた大切な旅行。いつも、いつも晴れていた。

「いっしょに旅行に行くときはいつも晴れてるよね!」と、車の助手席でとびきりの笑顔で笑っていたあの子は、今はどこで何をしているのだろうか。

なぜか、雨は僕に晴れの日の出来事を思い起こさせる。
それが、人間の持つ逆説的思考からくるものなのか、潜在意識の中にある淡い記憶のかけらなのか、僕には分からないけれども。

「ハレ」と「アメ」。両方とも自然界には無くてはならないものなのに。
人がハレを恋するのは、やはり本能的に明るさを求めているからなのだろうか。

そして。
「私が一人で出かけるときは、いつも雨だから、やっぱり君が『はれおとこ』なんだよ。」
と少し寂しそうな顔をして付け加えたあの子に、
なぜ「時には雨も必要なんだよ」と、あの時言ってあげることが出来なかったのか。

もし、今再会できるのなら。
僕は雨の日に。
あの子と一本の傘をさしながら、ぬれた街を歩きたい。

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[都電荒川線 荒川遊園地前 by Canon EOS 50D]


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なやみ [日々鉄道小景~ショートストーリー]

「なやみはつきないなあ、にんげんだもの」と詠んだ詩人は、今はもうこの世の人ではない。
そう、「にんげん」なんだから、悩みは尽きないもの。
でも、心のどこかで、それを解決したくて焦っている自分がいることに、また気づく。

解決できない悩みがあるとき、人は神頼みをするもの。
江ノ電沿線にある、この小さな神社にも、多くの人が訪れ、多くの悩みが打ち明けられたことだろう。

そんな自分も、手を合わせれば、解決して欲しい悩みをたくさん並べていることに気づく。

「悩みが尽きないのは人間らしい証拠。」なんて、
相田みつをのように考えることができたなら。
多分自分自身のちっぽけな悩みなんて、すぐに解決できるだろうに。

ふと鳥居の向こうを、一両編成の江ノ電が走り去り、
あとには一陣の風が海風のように吹き抜けていった。

この暑い夏の日に。
天空から差し込む木漏れ日を受けながら。
僕は、今日だけは、こんなふうに祈ることにした。




「僕に関わったすべての人に、幸せが訪れますように」



遠くで江ノ電の汽笛が聞こえた。
海の、かおりがしていた。


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[2010/07/19 江ノ島電鉄 長谷-極楽寺 by Canon EOS50D]
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アメニモマケズ [日々鉄道小景~ショートストーリー]

あきばれ。漢字で書くと秋晴れ。
この言葉が作られた時代には、おそらく晴れの日が多かったであろう、初秋の福島。

昨今の猛暑、ひいては地球温暖化が問題なのか、私には分からないが、
勢い込んで出かけた休日の福島は、あいにくの雨模様。

「あ~あ、ついてないなあ・・・」
秋晴れの青空に、稲穂が風に舞いながら、ローカル線が遠くから走り去って行く・・・
そんな「感動的な」シーンを撮影できることを思い浮かべて、東京から車を走らせていた私には、
強い失望の気持ちがあふれていた。

お天道さまを恨もうにも、大きな雨雲という名の守り神様に隠れて、姿を現しもしてくれない。

「お~い、ちょっとで良いから、顔を出してくれよ~」と空に向かって叫んでみても。
いっかなお天道さまの「お」の字も見えやしない。

さすがにちょっとふてくされながら、農道に下りていくと、
たわたに実る稲穂に、雨粒が。そしてその更に先に小さな蜘蛛が動いていた。

昨夜から降り続いていたであろう雨にも負けず。
小さな足を懸命に動かして、自分の居場所を求めて、生きていた。

「頑張れよ・・・」

誰にともなくつぶやきながらファインダーを向けたその先を、
雨の色と、稲穂の色を車体にまとった臨時列車が静かに通り過ぎて行った。

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[2010/09/20 磐越西線 中山宿-磐梯熱海 By Canon EOS50D]


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タグ:磐越西線
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想いは空の彼方へ [日々鉄道小景~ショートストーリー]

僕の心の喜びを、いくら雲に向かって叫んでみても。
雲は何も語らない。

僕の心の悲しみを、いくら空に向かって叫んでみても。
空は何も語らない。

そこにはただ、白い雲と青い空があるばかり。

あの空に舞う、ひとすじの雲のように、僕の心も無限の可能性に向かって
羽ばたいていけたら、どんなにか幸せだろうか。

そんなことを思いながら、空を見上げていたら、
大きな警笛を鳴らしながら、列車が鉄橋を渡っていった。

そうか、君も決まったレールの上をひた走る存在だったんだね。

鉄橋を渡る列車の、規則的に刻まれるジョイント音を聞きながら、
僕は不意に涙した。今日の空が明日の空につながっていることを祈って。

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[2010/10/11 八高線 東飯能~金子 By Canon EOS 50D]


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頑張る君へ [日々鉄道小景~ショートストーリー]

僕の友人に、田舎から出てきてある目的のために、独りで一生懸命努力している人がいます。
その人はいつも明るく、笑っていますが、そんな笑顔の中に時折不安や厳しい現実に押しつぶされそうになってしまいそうな悲しげな表情を見るとき、何もしてあげられない自分に大きな無力感を感じます。

君のために僕は何もできないかも知れないけど、1枚の写真を贈ることは出来るかも知れない。
どんなに冷たい雨に打たれても、必ずその先に青空が見えるはず。そんな願いをこめて、「雨あがり」と題したこの写真を載せました。

ファイト!

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[東北本線 蓮田~東大宮 by Canon EOS50D]
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